修羅の宴
経済小説をどんどん読みたい。
本作は有名なイトマン事件をモチーフにした作品だ。
イトマン事件自体は以前から知っていたが、事件の経緯だけを見ても、それだけのことをしてしまったイトマン社長の動機がわからなかったが、本作を読んで「銀行でトップになれなかったが、イトマンという自分の城を断固として守りたい」という(真実かどうかはわからないが)納得がいく理由が得られた。
しかしながら、私も平成後期の銀行のコンプラ遵守意識の高さを知っているだけに、なぜ元銀行員が審査も何も無視したワンマンな融資を行って裏社会の住人に数千億円も絡め取られるような事態になってしまったのかということについてはまだ腹落ちしていない。単にバブルだったので楽観視していたでは済まされない。イトマン社長が勧められるがままに絵を買わされる部分については全くリアリティを感じられないのである。
本作ではほとんど描写はされていないが、恐らく、一度関わってしまったが最後、裏社会流の脅しを受けて泥沼に嵌ってしまい、イトマンは裏社会のお財布と化してしまったのだろう。現在もどこに流れたか行方が分からない数千億円についてはそれなりの表か裏か分からないが権力者に吸い取られており、イトマン社長など刑事告訴されている人たちはスケープゴートなのだろうなと思わされる。
国重さんの住友銀行秘史を読めばいくらか明らかになっているんだったら読みたいが。