ドキュメント 金融庁vs.地銀 生き残る銀行はどこか

 

 

金融庁vs地銀、というエピソードがそこまで充実していたわけではないが、特に近年の金融庁の取り組みについてキャッチアップするのにこの本は役立った。

金融庁による検査も個別の案件で不良債権かどうかの査定をやっていくよりガバナンス面を検査することで是正しようという方向にシフトしている。

 

目をつけられたのは三井住友信託銀行。自分も非常に安い金利に惹かれて同行で住宅ローンを組んでいるが、その金利ダンピングではないかとの嫌疑を掛けられた。その嫌疑はなんとか払拭したものの、社長の任期が8年と長期に渡ったため誰も文句を言えない体制になっているのではないかとして退任を迫ったのだった。金融庁はそこまで介入するのか~。

他にも森長官の代になってからは法律を作って厳しく取り締まるというより、理想の姿を例示し(コード)、具体的な実現方法は各金融機関に考えさせるというスタイルで監督するようになった。

 

地銀の取り組み時事例で面白かったのは、北海道銀行が商社を作ってハバロフスク支社からロシア人の冬にトマトが食べたいというニーズに応えて日本の業者を呼んできて氷点下100度に耐えうる特殊な温室を作って冬場の農作を成功させたという話。私はこういったビジネスを生み出せる能力が地銀の行員になかなか求めることができないという点が問題なのかもしれないと思っている。

 

NISAを推進した金融庁と、税の論理を振りかざす財務省の対立の話や、長銀の金融再生法、早期健全化法とか企業再生ファンドとかをやっていた頃の話も少し触れられていたがこの時代のことを掘り下げた書籍を読んでみたいと思った。