誇りある金融

 

誇りある金融 ~バリュー・ベース・バンキングの核心

誇りある金融 ~バリュー・ベース・バンキングの核心

 

 自社の役員の方に「君はバリュー・ベース・バンキングと言う言葉を知っているかね?」と聞かれて、全然聞いたことなかったので買ってみた本。

 

バリュー・ベース・バンキングとは、持続可能な社会・経済・環境の発展をもたらすために「おカネ」という手段を活用していくという考え方。つまり、利益ではなく「価値を大切にする金融」のことをいう。GABV(The Global Alliance for Banking on Values)国際組織があり、バリュー・ベース・バンキングを追求する金融機関によってその取り組みの輪を拡げるために活動している。日本ではまだ第一勧業信用組合が加入しているのみであるが、日本のJPBVという組織には多数の協賛企業が名を連ねている。

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本の中で心に留まった部分は、現代の金儲け主義の銀行で働く銀行員はプライドを持てていないということ。中南米やインドではまだ国が発展の余地を大きく残しているということもあって、銀行員が果たさなければならない役割は重大であり、矜持を持って働いているという。今の日本では確かに先進国に追いつけとか、国民の生活水準をあげるぞといったようなわかりやすい目標はない。ただ、それを自分たちで考えてやっていなければならない。少子化が問題だと思うなら、少子化に対抗する事業を応援すればよい。そういった大きな目標と自分の行動が一致しているとき、プライドを持って仕事ができるのだと気づいた。銀行員は直接事業をするわけではないので当事者意識が薄くなりがちだが、お金を扱うというキーパーソンであり銀行の理念や行動が社会に与える影響は大きいはずだ。

 

確かに世の中に必要な活動のためにお金を融資する立場である銀行が公益性の観点をもってきちんと事業を評価していけば、本当に必要なところにお金が集まってみんなハッピーというバリュー・ベース・バンキングの大事さはよくわかる。しかし、やはり金融機関の従事者はノルマに追われていて、公益性の観点は二の次になってしまうのではないか。メガバンクは多かれ少なかれ環境汚染をしてしまっている会社にも喜んで融資するだろう。経営陣が公益性重視だよー、ノルマより大事だよーと言ってくれるなら喜んで与したいよ!と大方の従事者は思うはずだ。ボトムアップで「私は、バリュー・ベース・バンキングを追求したいんです!」と言ってみて受け入れられる会社だといいが。。この本にはその答えはない。ただ、全ては対話から始まるという道筋は示されている。

 

自分は金融機関の従事者ではなくSIerに所属しているが、公益性の高い事業を見つけてきて、もしくはバリュー・ベース・バンキングを実践する金融機関にそういった事業を教えてもらって、なるべく原価で必要なシステムインフラを整えてあげるという貢献の仕方もあると思った。