プライベートバンカー 驚異の資産運用砲

 

プライベートバンカー 驚異の資産運用砲 (講談社現代新書)

プライベートバンカー 驚異の資産運用砲 (講談社現代新書)

 

 

清武さんのプライベートバンカーのノンフィクション小説を読んだ際に最後に実在の人物が主人公だったと気づいたが、名前で検索してみたら著書があったので手に取った。

こちらの本では、プライベートバンカーの業務内容を体系的に書いてあるので併せ読むととても理解が深まったと感じた。

 

特に著者の経験から語られる業界の不条理が面白い。

証券業界で営業をやってきた人にとっては銀行業界はぬるく、銀行では請われて融資をする立場、資産額を把握できる、定期預金を投信に回してもらうときも署名捺印のみで他の金融機関から購入資金を導入する必要がないなどのアドバンテージがあり、同じ新規顧客の開拓をする場合ハードルの高さがまるで異なるとのこと。

また、外資系のプライベートバンカーでは効率よく金を集めるために他の銀行から太客のついているバンカーを引き抜いてきて、顧客を移管できたところで嫌がらせをして辞めさせることで客を剥がして自分のものにするというやり方がよくみられるとのこと、清武さんの本で著者に対してすごいパワハラをする上司がいたがまさしくそういうことであったのか。

 

金融業界の問題として挙げられていたのは、日本政府は中央銀行、民間金融機関に国債9割を保有させているが、日本人の預金や保険の積立金を国の借金に充当したいという思惑があり、日本人が海外の金融商品に流れるようなことがあると困るため、煩雑な金融規制がたくさんあるのではないかとのこと。

例えば、日本に支店などを置いていない保険会社が日本の居住者に売ったり、逆に日本の居住者が加入するのは保険業法違反となる。自動車、家電、ITなどと違って金融だけがグローバル競争にさらされておらず、商品やサービスの質がブラッシュアップされない。だから、海外の金融商品を提供できるプライベートバンカーに選ばれた一部の富裕層だけしか、その恩恵に預かれない。

 

海外の金融商品は何が違うのか

  • ファンドや生命保険に担保価値を認める(レバレッジを効かせられる)
  • 海外では国債の利回りが高いので高いパフォーマンスで運用できる
  • 日本で海外の金融商品を購入する際、現地通貨建てといっても日本円にする時に為替次第で利益が消し飛んでしまうことがあるが、それがない

著者の磨き上げた鉄板ストラクチャーは上記の商品(時にオフショア生命保険)を使い、ハイイールド債を購入し、運用益で保険料支払いを相殺できるようにし、さらにタックスヘイブンに法人を登記したり、相続税がない国に顧客を移住させるなどのスキームを駆使することで最大限の節税効果を得る。

これだけを見るとハイイールド債を使った綱渡りのようにも見え、相当危ないようにも思えるので自分が5千万持ってたとしてもこれを飲めるかな~と考えてしまう。ハイイールド債自体、かなりの企業数の債券で構成されているファンドで、さらにそれを複数本で分散化しているので大丈夫だ、みたいな理論であった。Amazonのブックレビューではこれに結構指摘されていて、今日日そんなに利回りは良くないとかそれをするなら劣後債の方がよいとか、そんなにハイイールドがいいなら生保組まないでそれだけでいいだろとかそういった意見があった。なるほど。。

とにかく最終章には富裕層以下の人は何をすればいいかなども書いてあって、新書にしては内容のすごく濃い本であったなと感じた。良本。