プライベートバンクは富裕層に何を教えているのか?
プライベートバンクに仕掛けられるITソリューションとは何かという課題を持って、
そもそもプライベートバンクとは何かについて学ぶために本書を手に取った。
これまでプライベートバンクというと富裕層がさらに私腹を肥やすために利用する
というイメージが強かったが、日本は相続税がダントツに高い(55%)ので
被相続人が相続税を払えず、資産や事業の相続ができないという事態にならないよう
対策を打ちたいという目的が大きいようだ。
また、10億円の資産家が3人の子息に均等に相続すると富裕層が3人増えるので
今後プライベートバンキングのニーズは増加するとのこと。
日本にもプライベートバンキング機能を持った金融機関はたくさんあるが
世界のトップ25には1つも入ってきていない。
(トップ5はUBS、バンカメ、モルスタ、クレディスイス、RBC)
日本のプライベートバンキングサービスが劣っているのは、手数料形態。
海外では資産規模によって手数料が優遇されるのが当たり前だが、
日本では資産規模に関わらず一律の手数料が課される。
ただし、日本固有の税法や、日本人特有の考え方があるので
プライベートバンキングサービスにはニーズがある。
ただし地銀などでは自前でグローバルな資産運用に知見のある人材が確保できなので
クレディスイスなどと提携している場合が多い。
以下、本書でわかったことのメモ。
富裕層とプライベートバンクの接点の持ち方
- 預かり金が規定金額を超えたとき
- 資産管理会社から推測する
- 登記簿謄本を取得する
- 急成長している未上場企業を探す
- M&Aのニュースをチェックする
- 既存顧客からの紹介
- 経営者団体などに入る
- 弁護士・税理士、不動産業者からの紹介
- 富裕層が自ら名乗り出る
プライベートバンクのサービス内容
- 資産運用アドバイス、金融商品仲介
- 節税対策(富裕層の複数国への資産移転プロジェクトなど)
- 資産・事業承継計画の立案、フォロー
- 資産管理会社設立の提案、フォロー
- ステータス系サービスの紹介
- 事業成長のサポート
- 子供の教育の支援
- 最先端医療施設・高級老人ホームなどの情報提供
- オーダーメイド旅行の斡旋
- チャリティ活動の支援
- 顧客の話し相手
富裕層へアドバイスすることが多い資産運用の10原則
- ゴールを明確にし、逆算するゴールベース資産管理
- バランスシートで家族の資産を可視化する
- 円建ての預貯金のみに頼らない
- 世界経済の大きな流れに逆らわない
- マーケットに依存しない分散型ポートフォリオを組む
- ルールを知り、ギリギリまで攻める
- 金融商品の目利き力をつける
- 一発子だけは絶対に避ける
- 資産運用は中長期で考える
- 次世代を見据えた資産運用をしていく
富裕層向けの金融商品
SMA、ヘッジファンド(ロング・ショート戦略、マネージドフューチャーズ戦略)、
デリバティブ、IPO株の優先割り当て、PEファンド・VCファンド、サムライ債、 CoCO債
富裕層向けの金融商品を代替する投資手法
- ライフプラン表、ゴールベース資産管理
- BSとPLでキャッシュフローを可視化
- お金に色を付ける(使う、貯める、増やす)
- 手数料が高い外貨預金の代わりにFXを使う(外国送金しない場合)
- ハーバード大流ポートフォリオの考え方を取り入れる
- 株式(グローバルインデックス、ETFの方が信託報酬が安い)=25%
- 債権(CoCo債)=25%
- オルタナティブ投資(金融資産)=25% 未公開株ETF、ヘッジファンド型投資信託またはETF
- オルタナティブ投資(現物資産)=25% REIT、不動産クラウドファンディング、アセットシェアリング、コモディティETF(金、原油、etc.)(ただし、すでに不動産を持っている場合は、コモディティETFに集中)
- ドルコスト平均法
- 年1のリバランス
- ハイプサイクルを参考にテンバガーを探す
- IPOに応募
読みやすくて良い本だった。筆者は私と同い年だ、すごい。
より興味が湧いたのでもう少し生々しい話を求めて、
プライベートバンカーを題材にした小説などを物色中。