知識ゼロからの天皇の日本史

 

知識ゼロからの天皇の日本史

知識ゼロからの天皇の日本史

  • 作者:山本 博文
  • 発売日: 2019/01/24
  • メディア: 単行本
 

学生時代に日本の歴史を学んだ頃、目立つのは武将の名前ばかりで、
天皇と言えばたまに内戦を起こした後鳥羽上皇後醍醐天皇が出てくるだけだった。
私の周りの人でも結構「武士が幕府やってる間、天皇は何をしていたの?」
とか言う人も多い。確かにそうである。

そこで分かりやすい日本史解説で有名な山本博文教授の本書を手に取った。
本書の構成として大きくは天皇・皇室に関連する用語の解説が前半にあり、
以降は歴代天皇の即位の経緯や政治・文化面での実績が整理されている。

用語の解説では今まで何となくメディアで見聞きしていたことが
全部つながった感じがした。
・神話と史実の境目について解説されている
歴史学的には勿論、天照大神の孫が高千穂峡天孫降臨して・・・
 その子孫が天皇になってとか言うのを史実として扱っているわけではない)
三種の神器、皇室と後続の違い、宮家の一覧など細かく書かれている
天皇が行う祭事と行事の一覧
(多すぎて驚き。新嘗祭は豊作を感謝する祭事だが名称を始めて認識した。
 ずっと国民に代わってこのようなスケールのを大きい祈りを捧げて
 頂いていたのか。。)
 
また、歴代天皇の実績についてだが、
平安時代くらいまでははっきり天皇もしくは皇室が主権であるのに、
まず藤原氏が実権を握るようになって、それから武家平氏、源氏が台頭。
海外の王室などと違って天皇家は潰されたりはしなかったのだが
傀儡として武家にお墨付きを与えるだけの存在になっていく。
(太古から存在する天皇を中心とした権威システムを保護し、利用する形。
 武家が権威構造を一から作るより既存のシステムを流用することを選んだ。)
それに対して、朝廷は時代によっては恭順になったり、反抗したりと
色々な状況があるが、幕府との政治的な駆け引きだけではなくて
国家神道の頂点であることの権威を高める努力などをしていた。
朝廷の力が弱くなっていったとき、その財政も当然ながら悪化していたが
清貧に努め、伝統ある祭事の保全を優先した後土御門天皇等の存在も
あったというのは興味深かった。