中小企業の資金調達 大全
ファイナンスの知識で取りこぼしていることがないか確認のため手にとった本。
中小企業の資金調達について、資金不足の原因別に必要な資金調達手段について体系的に整理されている。
資金調達手段は、以下の3つに大別される。
- アセットファイナンス(資産から資金を調達する)
- デットファイナンス
- エクイティファイナンス
アセットファイナンス
資金調達というとまず第一に銀行から借りることをイメージしてしまいがちだが、アセットファイナンスにこんなにもたくさんの選択肢が合ったことに驚いた。
特に固定資産のリースバック(例えば、自社ビルを売って、リースで継続利用することで業務に影響を出さずに一時的な資金調達を実現する。分母である資産を減少させることでROAを向上できる効果もあり)については、具体的なプロセスも解説されていて勉強になった。
また、「事業損益が黒字のときに黒字が出る資産処分は良くない」などの税務面での注意点も改めて理解できた。
なお、SPCもこれまでよく理解していなかったのでメモ。
自社の持っている資産(例えば、映像コンテンツの放映権、著作権)をその目的で設立したペーパーカンパニーに譲渡して対価を得て(一時的な資金調達を実現)、譲渡した資産を活用した事業を証券化して投資家を募り収益を還元していく仕組み。ただし、相応のスキームコストは掛かるので用いる場合は大口の資金調達に限る。
ABL(Asset Based Lending)=アセットを活用したデットファイナンスは、アセットとデットの中間にある手段として整理されていた。
デットファイナンス
基本的に手を付けられるアセットがない場合、デットファイナンスを検討することになるが、金融機関からの融資を検討する前に、私募債の発行など優先すべきことが色々とある。
ただ、私募債の発行などは財務が十分健全であることが前提だと思われるので、私募債を使うべき場面、実務面をもう少し掘り下げて知りたいと感じた。
著者は私募債の魅力を訴え、もっと活用するべきと書いていたが、普通、中小企業の私募債を受け入れるのには不安が伴うのではないかと思う。
ITソリューションでその不安を取り除くことができるのではないかという点について検討してみたい。
デットの中で優秀なのは前受金。潰れにくい企業は前受金(ボトルキープ、Suicaなど)、そして、無在庫、継続売上システムを採用している。なお、日本政策金融公庫の融資限度や期間など(4,800万、運転資金は5年、設備なら10年)全然知らなかったので参考になった。
エクイティファイナンス
社債等のデットで資金調達するのに対し、新株発行などのエクイティファイアンスがある。
返済の必要がなかったり、税務上不利であったり、色々と性質が異なるが、ケースに応じた社債/新株発行の使い分けが知りたいと思った。
狙い通り資金調達のパターンが体系的に知ることができたので、特に興味を持った私募債を中心に掘り下げて調べていきたい。