八甲田山〜死の彷徨〜

有名な八甲田山の遭難事件について、人から「太平洋戦争中の事件だよね」と
言われたとき、チガウ、そんなに最近の事件ではないと思ったが、
はっきりとは分からなかったのでこの件についてよく知ってみたいと思って、
新田次郎でまだ読んでいなかったこの本を手にとって一日で一気に読んだ。


時代は日露戦争開戦の2年前、目的は露軍の侵攻に備えた雪中行軍訓練であった
ことがわかった。
遭難の理由は人災であったと考えており、小説でもそのように書いてあったが、
実際は天災によるものだったことが検証サイト等で調べたところ分かった。
遭難事件前後に旭川で記録した最低気温は未だに破られていないのだそう。


最新鋭の装備で望んだらどのようになるかにすごく興味が湧いた。
マイナス40℃で3日も彷徨うのであるから、結果は同じという意見が多数だが。


新田さんの本はやはり読みやすい。
私も山でのことを文章にすることが多いが、新田さんのように巧みな文章で
山での思い出を克明に表現してみたいとの思いから、気になった言葉や表現を
記録しておくことにした。
久しぶりに小説を借りるのではなく買ったのだから、流し読むだけでなく
読み潰してやりたい。


【気になった言葉】
蓋然性
ある事柄が起こる確実性や、ある事柄が真実として認められる確実性の度合い。
からしさ。これを数量化したものが確率。「―の乏しい推測」


叉銃(さじょう)
http://taka25ban.sakura.ne.jp/newpage25.htm


磊落
度量が広く、小事にこだわらないこと。また、そのさま。「―な性格」「豪放―」


累進
1 地位などが次々に進み、上位にのぼること。累遷(るいせん)。「若くして局長に―する」
2 数量・価格などが増加するにつれて、それに対する比率が次第に増すこと。「―課税」


酒が凍る
アルコール度数が高いと凍りにくい、家庭用冷蔵庫では焼酎は凍らない。
寒冷地であるロシア産ウォッカのアルコール度数が高いのは冷蔵庫よりも外気の方が
寒くなることが普通にあるため。


【良いと思った表現】
休憩、昼食の命令が出ると、兵隊たちは、それぞれ日溜りを求めて、
雪の上に腰をおろした。雪の上の疎林の影をばらまきながら動いてる日ざしは
冬とも思われないほど暖かであった。